そんなわけで『ぼくのミステリな日常』『心のなかの冷たい何か』 『水上音楽堂の冒険』『悪いうさぎ』『遺品』と読みました。 『水上音楽堂の冒険』の後に『悪いうさぎ』を読むと、 その作家的な成熟というか成長というか、別人のような 「うまさ」にほれぼれします。
もちろん、だからといって『心のなかの冷たい何か』の ひりひりする痛みは今読んでも強烈で、そこには「うまさ」 など必要なくても構わない、という気もしないではありません。 そうだろう、ねえさん?
えーと、CHISE Symposium 2003に行こうと思ってIPAに行ってきたんですけど、 どこでやってたのかわかりませんでした(汗; ほんとにやってたんでしょうか (そういえば申し込みのメールも送っていたのですが返事も何もなかった)。
というわけでさっさと撤退し、『製造迷夢』を読みつつ、 RHG読書会へ。で、こちらも途中で抜けてMYSCON4へ。
MYSCON4ではいろいろな方にお会いできて楽しゅうございました。 以下、ざっとメモ。
今日は早く帰れたので(月曜も早かったのですが、 月曜は重要な用事があってそれどころではなかった)、本屋へ。
さすがに何か間違っているような気がしないでもない今日このごろです。
いきなりCobaltにこんなものが! 表紙にも目次にもないのに!(<1ページだけのインタビューなのでさすがに表紙には載りません)
――2作目と3作目の間も9年間ありまして、今回も9年たったわけですが……。
新井 私以外の時間の流れがとっても早いんですよ(笑)。
まったくです(謎)
インタビューの内容もなかなか興味深いですね。 素子さんの実作者的キャラクター論、とも言えるかも。
なんと、谷川俊太郎の小説が! さらに、平田俊子の小説が! そして、高橋源一郎の詩が! こんなすごいものが読めるとは。これだけで必読と言えましょう。すばらしすぎです。
もっとも、作品の内容自体がすばらしいわけではありません。そりゃあ一種の「素人」の 書いた小説・詩なわけですし。そうではなく、小説家と詩人の方向性の違いといった ものが、実作を通じて露骨に現れているところが楽しいのです。まさに論より証拠。 しかも最後に3人による鼎談という「論」もついてくるのです。
『21世紀文学の創造』のシリーズ各巻タイトルをみてもわかる通り、一般的に 文学を論じる際には「政治と文学」「『私』と文学」「フェミニズムと文学」 「世界と文学」といった、何かと文学を合わせて論じるものが少なくありません。 そんな中で、この本はただ、「文学」の現在についてだけを試みようと しているように見えます。逆にいうと、政治や私や社会については 何も見えてこないのですが、それも当然、それらは文学ではないからです。
文学の実作に興味のあるひとにおすすめします。
ところで、この3人の中では平田さんが一番知名度が低い、というよりぜんぜん 知られていない人のような気もしますが、 私にとっては荒川洋治と並んで好きな詩人です。何より面白いですしね。 平田さんに興味のある人は、 思潮社の『平田俊子詩集』【 bk1 / amazon / Yahoo! / 旭屋 / Jbook / 紀伊國屋 / eS! / 楽天 / 富士山 】 (これは各詩集からの選集みたいな本。 最後の伊藤比呂美による解説?もすごくいい)か、 普通の詩集なら『ターミナル』(品切れ?) 『(お)もろい夫婦』【 bk1 / amazon / Yahoo! / 旭屋 / Jbook / 紀伊國屋 / eS! / 楽天 / 富士山 】 (確か某谷川俊太郎書店にも おいてあったような気が)がおすすめ。
おまえが世界に 生まれてきたことを
人は祝うだろう 涙の中で
温かな体と ほほえみと夢と
憎しみと孤独を つつむゆりかご
ゼンマイ仕掛けの猫が 窓辺でつぶやく
人は人を殺せる そう作られた
オルゴールの歌姫 しとやかに歌う
人は人を殺せる そう作られた
(略)
人は人を殺せる 誰もおまえには
教えなかった歌を 風が歌うよ
人は人を殺せる 歌は繰り返す
人は人を殺せる そう作られた
(谷山浩子『ゆりかごの歌』より(アルバム『翼』所収))