ただ、風のために。6 (2005/March)

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2005/03/10 (Thu)

『納品のローレライ』

「ひとつ聞きたい。なぜこのプロジェクトは失敗したのだと思う?」
「……私は、まだ失敗が確定したとは考えておりません」
「では無事にリリースできると思うのか?」
「……」

「『特殊開発環境』……」
「希望だよ。今のわれわれに残された最後の希望。それがローレライだ」

「なぜ部内においても極秘なのでしょう?」
「その力の大きさゆえに……とだけいまは説明しておく。当社の滅亡を回避し、 この案件にあるべき納品の形をもたらす。ローレライにはそういう力がある」

「そんなことしたら、自分たちの方が人間でなくなってしまいますよ。 納期に間に合わないからって、なんでも許されるわけじゃないでしょう?  それじゃしまいには、この業界から人がひとりも いなくなってしまいますよ……!」

「だから……だからなんです。こんな屑みたいなおれたちだからこそ、 人間らしくコードを書きたいって若僧の思いを汲んでやっちゃもらえませんか?  いまじゃすっかりくたびれちまいましたが、自分もプログラミングを覚えた ばかりの頃は、こんな顔をしていたに違いないんです。……」

「あんたたち馬鹿なコンサルが始めたくだらないプロジェクトで、 これ以上人が倒れるのはまっぴらだ!」

 『なぜ』
 納めるために。
 このプロジェクトの犠牲をあまねく鎮めるために、いま私は魔女になる。 プログラマたちに死をもたらす魔女ではなく、 すべての開発に終わりを告げる納品のローレライに……。

――このプロジェクトに「あるべき納品の形」をもたらすといわれる 特殊開発環境・ローレライのビルドに成功した507チーム。 あらゆる絶望と悲憤を乗り越え、507チームは最後の開発へ赴く。 孤立無援の状況下、メンバーたちはそのリリースにすべてを賭けた。 そこに守るべき未来があると信じて。 今、くり返す混迷のデスマーチに捧げる「納品」の祈り。畢生の大作、公開。

納品

というわけで、年明けからやってた案件が一つ無事に片付きました。 いや、あんまり無事じゃないんですけど、うちのやった分は 無事だったと思いたい……。





written by TAKAHASHI 'Maki' Masayoshi (maki@rubycolor.org)
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